17栄養 植物にとってのマグネシウム

17種類の栄養素からマグネシウムについてご紹介します。

・マグネシウムの役割
光合成に必要な葉っぱの葉緑素を作る成分で、ミネラルの一種です。

・欠乏症
単純にマグネシウム不足の他、カルシウム(石灰系)やカリウム(液肥系)、無機態窒素(アンモニア系)が過多状態になるとマグネシウムの吸収が悪くなり、欠乏症が発生します。

光合成に必要な「緑色の葉っぱ」を構成する葉脈間の緑色が薄くなったり、白っぽくなることで、光合成の効率が低下します。

結果的に光合成不足による育成不良とも表現でき、収穫量、糖度、油分の減少、日持ちが悪くなったりします。

また、BSI生物科学研究所によるとマグネシウムの添加が必ず必要な育成環境があります。

“養液栽培、特に固形培地を使わない水耕栽培では、マグネシウムが必ず添加しなければ
ならない養分である。これは、土壌からのマグネシウム供給が全く期待できず、全量培養液から吸収しなければならないからである。通常、培養液にイオン濃度としてマグネシウムがカルシウムの約 1/3 から 1/2 が必要である。例えば、園芸試験場標準処方ではマグネシウム濃度がカルシウムの半分の 4me/L で、大塚化学 A 処方でもマグネシウム濃度がカルシウムの 1/3 に当たる 3me/L である。なお、養液土耕栽培では培地の塩類集積で、カリウムの拮抗作用によりマグネシウムの欠乏症が多くみられることも注意すべきである。” *1

・過多症状
カルシウムやカリウムの吸収が抑制され、欠乏症が生じることがあり、マグネシウム、カルシウム、カリウムのバランスが大切です。

・最近の研究動向

名古屋大学によるマグネシウムに関する研究結果をご紹介します。
国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院理学研究科の井上 晋一郎 講師、名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所の木下 俊則 教授らの研究グループは、九州大学の後藤 栄治 准教授、中部大学の鈴木 孝征 教授、名古屋大学大学院理学研究科の嘉村 巧 教授、岡山大学資源植物科学研究所の馬 建鋒 教授らとの共同研究で、植物が細胞内にマグネシウムを貯蔵するために重要となるマグネシウム輸送体タンパク質「CST2」を新たに発見しました。
マグネシウムは植物の生命維持に必要な必須栄養素の一つですが、根から吸収されたマグネシウムが植物細胞でどのように分配されているのか、よく分かっていませんでした。今回発見されたCST2は植物体のあらゆる細胞に発現し、細胞内の液胞と呼ばれる巨大な細胞内小器官にマグネシウムを輸送して貯蔵する働きを持っていました。この輸送体が欠損した植物は細胞質のマグネシウム濃度が適切に維持されず、正常に生育できませんでした。更に、植物はこのマグネシウム貯蔵システムを利用して気孔を開口させることも発見しました。
これらの結果は、植物のマグネシウム利用を理解する上で重要な知見を提供します。また、CST2は植物のマグネシウム含量を左右するため、将来的にはこの輸送体を用いた農業への応用も期待されます。
本研究成果は、2022年7月29日付イギリス学術雑誌「New Phytologist」電子版に掲載されました。*2

17種類の栄養素からマグネシウムについてのご紹介でした。

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*1 BIS生物科学研究所 マグネシウムと植物
*2 A tonoplast-localized magnesium transporter is crucial for stomatal opening in Arabidopsis under high Mg2+ condition